「真夜中の夜明け」

深夜の缶ビールは慰めてくれても、答えをくれない。


さぁ、俺の夜明けはいつなのか。




その日、来栖はいつも以上に、いつもの何倍も苛立っていた。


「時効成立」

ある事件の時効成立の日だった。
それは、来栖が警察学校から同期だった霧島健児という刑事が
巻き込まれた事件だった。
そう、彼は彼自身と彼の家族すべて惨殺された。
犯人は未成年。当時14歳。年齢の割に知能犯。
ゆえに、まともな証拠は見つからなかった。
逮捕直前まで行って、確信が掴めないまま証拠不十分。釈放された。
来栖は、ずっと彼を犯人を追いかけていた。

しかし、今日証拠不十分、未成年、多くの法律が彼を擁護し
掴まることはなく、今日時効が成立した。

「来栖」

呼んでも返事はない。

「来栖」

「なんだよ」

「コーヒーどう?」

「あぁ・・・・」

ありがとうはくれない。それが来栖。

「・・・・・・・」
時効事件の書類を見て、彼はぼーとしている。

何を言えばいいのだろう。
何かを言いたいが、言葉にならない。
情けないな・・・・・。

「来栖・・・時効になったからって、事件は終わりじゃない・・・と・・思う・・んだ」
「何がだ?」
「何がって。時効で罪が消える訳じゃないだろ?」
「でも、法律で裁かれることはない」
「・・・・・・・・」
「もう、裁かれることはないんだ!」
その言葉と共に彼はデスクを強く叩いた。
さっき置いたコーヒーが零れてしまいそうだった。

「イライラする。お前、帰れよ」
「来栖・・・・」
「だいたい、何でこんな時間まで居る?もう、帰宅時間だろ?」
「・・・・・」
「出てけよ・・・ウザイ」
「俺は・・・・・」

「俺は・・・・何か、助けになればって思って・・・」
「助け?なんだよ。それ」
「いや・・・」
「ウザイんだよ・・・帰れよ!」
「それでも、俺は!」


来栖は、突然伊達の胸ぐらを掴んで・・・・・・
キスをした・・・・・・。

当たり前のように、驚かないはずがない。
「なっなに・・・・」
自分の願いが叶った・・・事は確かだが・・・・・・。
「分かったろ!でてけよ!ウザイんだよ!お前が居るとうざいんだよ!」
「・・・・」
困惑する伊達。
何故、キスをされたのだろう。
「何故・・・・キス・・・・を・・・・」
「・・・・・・・・」
来栖は黙っている・・・・・・。

「嫌だったろ。だからでていけよ!」
「・・・・・・」
「そういうことだよ、だからお前はウザイんだよ!消えろ・・・失せろ・・・」
彼が、痛々しく見えた・・・・・。

「嫌・・・じゃない・・・・」
「え・・・・・」
ふいをついて今度は伊達からキスをした。
来栖は拒否をしなかった。
唇が離れた瞬間・・・・・
「なんで?」
と、問いかけてきた。
「・・・・好きだから・・・・・」
「!・・・・何言ってるんだよお前・・・・」
「好きだから、来栖が好きだからキスは嫌じゃない・・・・」
「・・・・・・・・・」
「来栖・・・・好きだ・・・・・」
「・・・・・・・・」
「ウザイ・・・・か・・・・?」
「・・・・・・まさか・・・・」

二人はまたキスをした。
来栖の膝にのり、深いキスだった。
来栖は、伊達のワイシャツはすかし脱がして素肌に触れる。
その度に、甘い声が漏れる。

「好きって・・・・本当か・・・?」
「もちろん・・・・・」
「来栖は?」
「・・・・・愛してる」
「・・・・・・・・・」
伊達は泣き出した。
「泣くなよ・・・・」
「嬉しくて」


「事件・・・」
「ん?」
「悔しい・・・よな・・・・?」
「・・・・・もちろん・・・・」

「もう一回キスして・・・・」
「・・・・・くちゅ・・ちゅ・・・」
深夜の警察署内、淫乱な口づけの音が響く。
激しく、来栖は俺の素肌に触れてくる。


幸せだった。
真夜中なのに、夜明けを迎えた気分だった。



ただ俺は、JOKERの名の下に決意を固めていた。
愛する人のために。





まぁ一言、
愛のために。
につきますね。