「スクール!! -愛する人のために本気で泣け-」


男は、夜の街を飲み歩いていた。
男はゲイだった。それ故、日々苦悩が耐えなかった。
今日の酒を煽るのは、誰でもなく自分を振った男だった。
ずっとそばにいるといった男。自分のすべてを理解してくれるといった男。
なのに・・・・・。
結局、男は女という最大の壁に勝てない。
いつもそうだった。いつもその壁の前で倒される。跪かされる。
その度に、こうやって酒を飲む。
何軒目だろう。でも、まだ足りなかった。
たぶん、三件目のバーで酔いつぶれ寸前になりながら
「セブンス・ヘブンNo.2」を頼んだ。
フルーティーな味わいが口いっぱいに広がる。
ぼーっとする。あとどれくらい飲めばこの痛みは癒されるのだろう。

その時だった。

「ご一緒してもいいですか?」

男が声をかけてきた。
何歳くらいだろうか。
40・・・ぐらいだろうか。
しわの具合が自分ごのみ・・・なんてどこかで思ってしまった。
なんだろう、なぜこの男声をかけてきたのだろう。

「どうぞ」

何となくだった。そのまま無視してしまうのは・・・何というか・・・。
この男の目つきが気になった。とらわれた気がした。

「何を飲みますか?」
「そうだな・・・サケティーニを」

「今日はお一人ですか?」
「えぇ・・まぁ・・・」
「男の一人酒っていいですよね。考え事したいときとか。
俺は職場でわいわい飲むことが多いんですけど、たまに一人になりたくてきます」
「そうですか・・・」
聞いてもいないのに、男はべらべらと喋る。
「あなたは?」
「僕は・・・・・」

言うつもりなんてなかった。
でも、かなり酒が回って歯止めがきかなかった。
だから、すべて喋ってしまった。

「振られたんですよ」
「あっあぁ・・・まずいこと聞いちゃったかなぁ・・・」
「いいんですよ。だから、ここにきているんですから」
「はぁ・・・」
「知らない相手の方が話やすいし」
「なぁ、俺も乗ってきました。何でも、俺に喋ってください。
こういう時は聞き手が必要でしょ?」

確かにそうだった。

「僕・・・ゲイなんです・・・」
「・・・・・・」

沈黙。

「引きますよね。気持ち悪いですよね」
「いえ・・そんなことないですよ!恋愛は自由って言うか!なんていうか・・」
「無理しないでください」
「ホントに、偏見とかないですから」
「・・・ありがとう・・・ございます・・・・」






愚痴をだらだらと喋って・・・・酔いが随分と回ってきた。
たった瞬間ぐっらと歩けなくなる。
「大丈夫ですか?」
とっさに抱きかかえられる。
「・・・大丈夫です・・・・」
「無理ですよ・・・俺送ります・・・」

その言葉に力が抜け、体を男に預けた。







次ぎに目が覚めたのは、ホテルのベットの上だった。
はっとして起きあがる。
「大丈夫ですか?まだ酔いが?」
「って・・・!あなたは、何をしているんですか?」
ゲイ・・・だからこそ変な勘違いをした。
「介抱しているんです。酔いつぶれていたし、俺はあなたの名前を知らないし」
「・・・・・」
「ほかに行く場所なんてないでしょ?」
「・・・・・」
「はい、緑茶。体あたたまりますよ」
渡されたお茶を、素直に受け取る。

一口飲む。

俺はその瞬間壊れた。
男を試すことにした。
今の自分を慰めるに相応しい相手かどうか。

茶碗をわざと落とす。

「大丈夫ですか!?」
驚いて、落ちた茶碗の方を向く彼の隙をついて
うまく体制を整えキスをした。

最初、男は驚いていたが拒絶はしなかった。
むしろ・・・・・俺を受け入れていた。

「あなたはゲイじゃないでしょ?」
「・・・・どうおもいます?」
「?」


キスが激しくなっていく。
ベットに押し倒され、服の下にゆっくりと手が入ってくる。
確かに興奮を感じていた。正直タイプの顔立ちだった。
俺の服を脱がせて男は満足げだった。
「あなたも脱いでください・・・・」
「じゃあ、脱がせてくださいよ」
ごくりとのどの奥がなった。

熱かった。
体も心もすべてが。
一夜の夢。
慰めの夜だった。







深い心地いいキスが、今までにない安らぎを感じさせた。






「う・・・うん・・・・」
キスがあまりにも心地いい。何だろう。
酒のせいだろうか。
「かわいいですね」
「くっ・・・うっ・・・んん・・・・」
淫らにベット脇のライトで照らされた体を、
男は丹念に愛してくれた。
自分好みの・・・・攻められ方だった・・・。
もっと・・・欲しい・・・・この人が・・・・。










「うっ・・・ん・・・・・?」
気がつけば朝だった。
隣で一晩ともにした男はぐっすりと眠っている。
昨夜の彼の熱い体を思い出す。
綺麗な体。鍛えられた綺麗な体。
好みの男だった・・・と思う。
ただ、後味が悪くなるのが嫌になった。
だから・・・彼が目を覚ます前に消えることにした。

一夜の夢でいい。
好みの男に抱かれた。
ただそれだけのこと。
遊びとは言いたくない。
一夜の愛だった。
それだけだ。

長続きさせようとすれば、同じことの繰り返し。
なら、美しい夢の間まで終わらせよう。
名前の知らない男。

身支度を済ませて、あとは出ていくだけになっても
なんだかこの男の顔がこの人との別れが名残惜しくて
起こさない程度に頬を触った。

こんな人に愛されたかった。








さよなら。













「桐原先生書類の確認をお願いします」
数ヶ月後、俺は当たり前の日常を繰り返していた。
これでいい、これでいいと自分を押さえ込んでいた。
体がぽかりと開く感覚は確かにあった。
でも、仕事に全力を尽くす事でかき消した。

「今日ですよね。新校長がくるの」
「民間人校長だなんてどうなんですかね」
今回、この小学校は民間人に校長を任せることになった。
自分としては、多少なりとも何かを変えてくれるのではないかと可能性を感じていた。
しかし、現場を知らない人間が入ってくる。これから、苦労は耐えないだろう。
まず、児童たちに慣れさせるのに時間がかかる。現場を知らないと言うことは、
現場の人間との壁を生むこともある。それをどうしてくれるだろうか。


そんな、当たり前のことを考えていた。
教育者として、当たり前のことを。



しかし・・・・・。




「この人ね!校長だって嘘ついてるんですよ!
女子児童のスカートに手をね!」
「誤解です!児童がいじめをしていてですね!それでライターを!」
警備委員に引っ張られながら男がやってきた。

「この人がね、新しい校長だって嘘をつくんですよ!」
「成瀬です!今日からお世話になる成瀬!」
「いや・・・・やだ・・・・本当に校長ですよ・・・!」
「えーーーー!!!!」

俺は、驚いて何も口にできなかった。
そこに居たのは、まぎれもなくあの日の・・・
あの夜を共にした男だった・・・・。


「あなたは、桐原伊織先生ですね。はじめまして、よろしくおねがいします。」




はじめまして?





この男は忘れたのだろうか?




しかし・・・・・・・・。



「お久しぶりです」


誰にも分からないように、一瞬トーンを変えて話しかけてきた。



この男は覚えている。



俺は、一晩関係をもった男と・・・これから校長といち教師という
上司と部下の関係を気づくというのか。



悪夢が始まった・・・そんな気がした・・・・。




つづく。








日9を月9風味にしてみた(笑)
さぁこのあとどうなるかな?
本当に私はつづけられるのかな?(笑)
ちなみに、月9まともに見ていないので
風味もくそもないと思うが。
実は、ゲイで攻めな成瀬校長に翻弄される
いおりんで居て欲しいvv
ちなみに、最初いおりんを振ったのは
大学の同期で偶然再会して恋に発展した
現在サラリーマンの男って設定です。
このあと出てこないんで大丈夫です(笑)
いおりんは、昔からゲイな設定。
まぁ詳しいことは今後続いたときの為に
とっておきましょう。

それでは、ありがとうございました!



ちなみに・・・これを書いて、UPしようしようと思っていたら
東日本大震災にあいました。私は仙台市民です。
これからも明るく腐女子として、人生楽しんでいきたいと思います。
まだガスが復旧せずなにかと大変ではありますが、
応援していただければうれしいです。
読んでいただきありがとうございました。


本当はシリーズ化の予定だったんですが、
放送終わったらどうにも熱が冷めて。
書けそうだったら書きます(無責任)←